大人でもできる!『受け口』を治すおすすめ矯正治療方法

受け口を見つめる矯正治療のキャラクター

こんにちは、ねもと歯科クリニック院長の根本有紗です。
本日は不正咬合のシリーズの一つ「受け口」の治療についてご説明していきます。

受け口は下の顎が突出してしゃくれたような横顔になるため、あまり見た目がよくなくコンプレックスを感じている方もいらっしゃるかもしれません。

また、受け口は見た目の悪さだけではなく、歯を失うリスクの原因にもなるため、健康のためにも治療の必要な歯並びと言えます。

受け口の治療方法や、費用面や治療期間を鑑みた上での治療を受けるのに適当な年齢なども解説していますので、ぜひ最後まで読んでみていただければと思います。

執筆者についてはこちら『ねもと歯科クリニック院長紹介

受け口とは?

受け口とは、反対咬合という下の前歯が上の前歯より前方に出ている症状をいいます。
その状態を「しゃくれ」とか「しゃくれている」と言いますが、不正咬合の分類で言うと反対咬合という分類になります。

輪郭などの見た目の問題に加え、上下の歯が噛みあわない事により発音がしづらいといった悩みを持つ方もいらっしゃいます。

歯を失う要因になる

受け口(反対咬合)をそのままにしておくとどうなるのでしょうか?

データとしてはかなりよくありません。
80歳の時に20本の歯が残っている方の歯並びを確認した所、反対咬合(受け口)の方の割合は0%でした。(開咬の場合も同じく0%)

このデータから言える事は、前歯がしっかり機能しないかみ合わせは、残念ながら歯が長くもたないという事です。

理由としては、受け口やオープンバイトの方は常に数本の奥歯のみに力がかかっており、その負担のかかっている奥歯からどんどん悪くなってしまうのです。

では逆によいかみ合わせとはどのようなものでしょうか?

よいかみ合わせとは、奥歯で咬むとき奥歯がしっかりかみ合わせを受け止める。
そして横に歯をずらした時には犬歯という一番強くて長い歯がかみ合わせを負担する。
さらに顎を前に出した時には奥歯は浮いて負担がなくなり、前歯がかみ合わせを負担する。

と言ったように咬む位置によって負担する歯が変わっている事が理想です。
そのため、受け口は審美的な観点だけでなく健康という意味でも必ず治しておいた方がよいです。

受け口の原因

下顎が出た骨格をしている

まずは骨格から下顎が出ている場合です。
矯正歯科用語で言いますと骨格性反対咬合と言います。

これは遺伝的な原因が大きいと言われています。
昔の人でいうとハプスブルク家というオーストリアの王朝の方々はこの骨格性の下顎前突症の方が多いです。ご自身が反対咬合の場合、両親や親戚、祖父母に下顎前突の方がいる割合が高く、またお子さんにも遺伝する可能性があります。

普通に咬むと前歯が当たってしまう

本来、顎の関節が楽な位置で咬もうとすると前歯が先に当たってしまい、顎を前に出すことで奥歯が咬めるという場合です。

矯正歯科用語で言うと機能性反対咬合といいます。

自然に咬んだり、奥歯に力を入れて咬もうとすると前歯が当たる場合、こちらに分類されます。

上の歯(下の歯)の生え方

上の前歯の方向が内側向きで生えている、または下の前歯が前に出ている状態です。
生え変わりの時の歯の方向に問題があったという場合もあります。

上の歯が極端に内側を向いて生えてしまったり、下の前歯が前方向に生えてきてしまった場合またその両方が重なった時には、骨格に大きな異常がなくても反対咬合になってしまう事があります。

矯正歯科用語で言うと歯性反対咬合と言い、歯の向きが原因で反対咬合になってしまっている場合を言います。

受け口の治し方

受け口の治療は大きく分けて3種類あります。

歯列矯正で治療を行う

歯の方向が原因の受け口(歯性反対咬合)、または前歯同士が当たって下の顎が前に誘導されてしまうことが原因の受け口(機能性反対咬合)の場合は、歯列矯正で治療を行うのがよいです。

骨格性の受け口でも、上の歯が引っ込んでいて下あごの大きさには問題がない場合や、下あごが大きく成長しすぎていない場合には、手術などの外科処置を行わず矯正で治療を行えます。

日本人は上あごが小さく、下あごの過成長はひどくない場合が多いので、受け口を治療するために手術しか方法がない、という方はあまり多くありません

矯正歯科では無料〜数千円と安い費用でカウンセリングを行っているクリニックも多いので、どの様な方法がよいのか相談に行ってみるとよいでしょう。

ねもと歯科クリニックの矯正治療』についてはこちら

手術を行って骨を切る

歯性の反対咬合や機能性の反対咬合の場合には骨を切る必要はありませんが、下あごの骨自体が骨格から大きすぎる(骨格性反対咬合)方は、下顎骨切り手術などを行って骨を切ってしまうというのもひとつの方法です。

歯列矯正はかみ合わせを変えたり口元が出ている、いわゆる「ゴボ口」の場合には問題なく引っ込められますが、下あごの骨の位置は変わらないため、かみ合わせではなく下あごの骨の出っ張りが気になっている場合には治すことができません。
また、下のあごの前歯の骨は、上あごの骨と比べて極端に薄いため、大きく下の前歯を後ろに下げる事はできません。

そのため矯正治療を行う場合には、下の前歯は歯を後ろに傾斜させるカモフラージュ治療を行う事になります。

しかし、傾斜できる角度にも限界がありますし、傾斜が急ですと不自然にもなりますので、全ての方の治療を矯正治療で治すことができます、と謳っている広告等は明らかに誇大広告と言えるでしょう。

しかし前述しましたように、日本人では下顎が過成長であることによる下顎前突症の方は比較的まれですので、骨を切るのが怖い方も多くは矯正単独での治療が可能である事がほとんどです。

かぶせ物で治療を行う場合

かぶせ物で歯の方向を変えて、受け口を治療するという方法もあります。
上の歯または下の歯、もしくは上下両方の歯を削って方向を変えるものです。

かぶせ物での治療方法は、比較的早く治療を終了する事ができるのと、虫歯があれば虫歯治療の一環として保険診療で治療を行う事ができるため、費用の負担が比較的安く済むという利点があります。

しかし、前歯が健康な歯である場合には、全て歯の方向を変えるために歯を小さく削り、神経も取らなくてはいけません。

また、歯の根の方向と異なる方向にかぶせ物をつくる必要があり、歯根に横向きの力がかかりやすくなるため、強い力がかかってしまう事が原因で、歯が割れてしまったりする可能性が高く、歯を健康に長持ちさせたい方にはオススメできません

歯列矯正や外科矯正を将来行う可能性がない場合や、既に歯が全てかぶせ物になってしまっている場合にはこの治療を行うのも一つの選択肢でしょう。

矯正治療の種類とおススメな方は?

マウスピース矯正での治療

インビザライン

マウスピース矯正の中でもインビザラインは、酷いガタツキや難しい治療にも対応可能な治療です。

特に他の矯正と違うのが、順次的遠心移動という全ての歯を順番に後ろに下げる(奥に引っ込める)治療です。
この治療によって、非抜歯で受け口の矯正ができるようになりました。

そのため、口元の下がりが2~3ミリ以内でよい場合には、歯を抜かないでインビザラインで遠心移動を行う、また大きく歯を後ろに下げる必要がある場合にはアンカースクリューを併用するなどして遠心移動量を増やす事もできます。

インビザラインで用いるアンカースクリュー』についてはこちらから

また、インビザラインであれば抜歯矯正も可能です。
口元の出っ張りゴボ口も気になる、且つマウスピース矯正希望の場合には抜歯を行うインビザライン治療を行うのも一つの方法です。

なお、問題なく治療は可能なのですが、24時間矯正器具が付いている状態となるワイヤー矯正と比較すると、治療完成までにワイヤー矯正は1年半~2年かかるのに対し、インビザラインでは3年程度と多少治療期間が長くなってしまうため注意が必要です。

アソアライナー、キレイライン矯正等

歯1本のみが反対咬合、または歯性の反対咬合、切端咬合(上下の前歯と前歯の先端が当たってしまっているかみ合わせ)に近い軽度の反対咬合の場合には、アソアライナーやキレイラインなどのマウスピース矯正でも治療が可能な場合があります。

インビザラインでもモデレートパッケージライトパッケージと言った枚数制限のあるプランで費用を抑えられる場合もありますので、カウンセリング等で聞いてみるとよいでしょう。

インビザラインモデレートパッケージ』についてはこちらから

ワイヤー矯正での治療

全体矯正治療

ワイヤー矯正であれば、表側矯正裏側矯正ともに幅広い歯並びに適応できます。

しかし、歯を抜かずに治療を行いたい場合にはインビザラインがよい場合もありますので、奥歯のずれの具合など、カウンセリングで聞いてみるのがよいです。

ワイヤー矯正は、歯を抜いての矯正治療が短い治療期間でできるので、短期間で抜歯を行って口元も下げたいという場合には、ワイヤー矯正を選ぶ方が治療が早く終わる事が多いです。

部分矯正治療

費用をかけたくない方で1~2本のみの反対咬合であれば、部分矯正で治療を行う事もできる可能性があります。

部分矯正は、ワイヤーの全体矯正の半分~4分の1程度の費用で治療する事ができるので、費用面では一番安い治療です。

アソアライナーやキレイライなどの軽度治療用のマウスピース矯正と比較しても治療費を安く抑える事ができるため、とにかく費用を抑えたい方はワイヤー矯正の部分矯正がおススメです。

大人でも受け口の治療は可能?

大人でも受け口の治療は可能です。
しかし、子どもの頃と違って成長がないので、できる治療とできない治療があります。

それでは、子どもの頃にやっておいた方がいい治療、大人でもできる治療、について説明していきます。

子どもの頃に受け口の治療をしたほうがいい場合

顎が横にずれてしまっている場合

受け口によって顎が横にずれてしまっている場合には、子どものうちに治療を開始するのがおススメです。

顎の横へのずれは受け口の方に多く、受け口の方は下の顎が前に出てしまっているだけでなく、歯のアーチのサイズも上下で合っていない事が多いです。

歯のアーチ

多くの場合、下顎のアーチの方が横に広いため、顎を右または左のどちらかにずらさないと咬めません。

そのため、ずれたかみ合わせのまま成長してしまいます。

顎の関節や成長は大人になると止まってしまいますが、下顎はゆがんだ状態で成長し、成長した後に歯だけ整えても、顎が曲がったままになってしまう可能性があります

そのため、顎が横にずれてしまっている場合には大人になるまで待つのではなく、子どもの頃から顎のゆがみを治療してまっすぐ成長するように整えておいた方がよいでしょう。

顎の位置がロックされてしまっている場合

上の顎が成長しにくいように、下の前歯が上の前歯の前に食い込んで上顎の成長を妨げている可能性がある場合には、大人になるまで待たず子どもの頃に早めに治療をしておいた方がよいです。

上顎と下顎の成長はタイミングが異なります。
まず、上顎が先に成長するのですが、上顎が成長しようとしている時に、下の前歯が邪魔をしてしまうと上顎が成長する機会を失ってしまいます。
さらに、その後下顎が成長するタイミングで下顎は自由に成長できる状態にあるため、受け口がよりひどくなってしまう場合があります。

少しでも下顎の成長を抑制したい場合

矯正治療によって小さい時から成長のコントロールはできるので、顎のゆがみを防止したり、本来の成長を少し抑制する事は可能です。

しかし、子供のうちから治療を行う場合には以下のような注意点がありますので、これらの点を踏まえた上で、それでも少しはよくしてあげたいという事であれば、お子さんの時から治療を始めるのがよいかと思います。

身長の成長が止まる時期(女性:15才前後)(男性:18才前後)まで歯並びを治療し続ける事を考えると、費用や時間はかなりかさんできます。
早い人であれば乳歯の段階から治療が必要な場合もありますので、3才~18才まで15年間矯正治療を行うとなると、費用も時間もかなりかかってしまいます。

また、下顎の過成長はたとえチンキャップ等の顎外固定装置を使い続けても確実に抑制することはできないため、最悪の場合15年間費用と時間をかけても反対咬合は完全には治らない場合もあります

大人になってから治療をしたほうがよい場合

上記に書いた以外の場合には、大人になるまで矯正治療を待つというのも一つの方法です

なぜなら、子どもの頃は歯磨きもしっかりできないため、装置をつけたり、例えマウスピースでも歯磨きをせずそのまま戻してしまう事により虫歯がたくさんできてしまう可能性もあります。

また、前述したように子どもの頃から長期間矯正治療を行ったからと言って全ての方で下顎の骨の成長を完全にコントロールできるわけではありません。
そのため、場合によっては大人になって成長が止まるまで待ち、短期間で治療を行うというのも一つの方法です。
大人の矯正治療の特徴』についてはこちらから

しかし、大人になると顎の成長はなくなりますので、矯正を行っても下顎の骨の出っ張りを引っ込めたり、骨格の歪みは改善できません。

いつ矯正を始めるかはかかる費用や時間、虫歯へのなりやすさ、歯磨きがしっかりできるか等総合的に判断する必要があります。

まとめ

受け口は将来歯を失ってしまう原因となるため、見た目の上でも健康のためにも治療することをおすすめします。

受け口の原因が骨格自体の問題であれば手術なども必要となってきますが、日本人の場合には手術しか治療する方法が無いという方は少なく、矯正治療がおすすめの方も多いです。

矯正治療は大人になってからでも可能ですので、気になっている方はまず歯科医院に相談してみてください。


ねもと歯科クリニック|札幌・大通りエリアの矯正歯科
北海道札幌市中央区南1条西9丁目南1条西9丁目1−15井門札幌S109ビル 1階
TEL:011-206-4183

SNSでもご購読できます。