マウスピース矯正の痛みについて

マウスピース矯正を行っている人の痛み

こんにちは、ねもと歯科クリニック院長の根本有紗です。

歯列矯正を始めたいけれど痛みが気になるという方、実際にマウスピース矯正を行っていて痛みに悩んでいるという方、矯正治療を検討しているけどどの矯正が痛みが少ないのか知りたいという方、矯正はわからない事も多いですし、痛みについてはあらかじめ治療を行うのであれば知っておきたいですよね。

本日は、矯正歯科治療歴15年で自分自身もインビザライン治療をしていた経験のある、院長の根本がマウスピース矯正の痛みや対処法についてお話していきます。

こちらの記事の執筆者については『ねもと歯科クリニック院長紹介』をご覧ください。

マウスピース矯正とワイヤー矯正はどっちが痛い?

まず、マウスピース矯正は全般的にどの程度痛みが強いものなのでしょうか?

一般的にはインビザラインをはじめとするマウスピース矯正はワイヤー矯正と比べて痛みが少ないと言われています。
痛みの強さでいうと、だいたいマウスピース矯正はワイヤー矯正に比べて3分の1くらいの痛みと言われています。
そのため、ワイヤー矯正では「痛くて食べ物が食べられなくて痩せた」「矯正ダイエット」などと言われる事もありますが、マウスピース矯正ではそのような事はほとんどありません。

特にインビザラインやクリアコレクトなどのコンピュータによるシミュレーションを用いて少しづつ歯を動かすシステムでは、1枚のマウスピースにつき動かす量が最大0.25ミリと決められており、歯に強すぎる力がかかる事はないため、特に痛みが少ないです。

ねもと歯科クリニックのマウスピース矯正』についてはこちらから

マウスピース矯正の痛みの種類について

それではマウスピース矯正治療中に痛いという方はどのような痛みの可能性があるのでしょうか?
痛みの原因別に説明していきます。

歯が動く痛み

歯が移動する時には少し痛みが出ます。
特にマウスピースを交換した直後には痛みが出る事が多いです。

それは歯が動かされる事で歯根膜と言われる歯と歯を支えている骨の間の膜が反応しているためです。
この膜が反応する事で歯が移動する方向に骨を溶かす細胞を膜の間から出し、骨を溶かします。
この細胞が骨を溶かす事で隙間ができ、歯が移動するのですが、歯根膜が圧迫される事、また歯根膜から細胞が出てくる事で歯の周りに炎症がおき、その圧迫や炎症によって痛みが出ます。

歯が規定の位置に動けばマウスピースからの力がかからなくなりますので歯根膜が圧迫されたり、細胞が出たりする事もなくなりますので痛みはなくなってきます。

食事をするときの痛み

マウスピース矯正に限らず、矯正中は食べ物を食べると痛みが出ます

原因は歯が動いてグラグラしているためです。先ほど歯が動く痛みの部分で紹介しましたが、歯は矯正治療により歯と、歯を支えている骨の間にある歯根膜という膜から歯を移動する方向に骨を溶かす細胞を出すというお話をしました。
矯正治療をすると、その歯根膜から出た細胞によって骨が溶かされ、歯は全体的にグラグラします。
グラグラした歯で食事をすると歯が動かされて今まで矯正治療前は痛くなかった部分でも痛みが出てきます。

あまり負担をかけるのも歯にもよくないので、矯正中は硬い食べ物は控えるのがよいでしょう。
また、矯正が終了するとこの歯のグラグラもなくなりますので、食事の時の痛みもなくなります。

久しぶりにマウスピースをつけた時の痛み

多くのマウスピースは1日に20時間~22時間とほぼ1日中マウスピースを装着しているよう指示が出るかと思いますが、中にはあまり長い時間装着できず、久しぶりにマウスピースをつけるという事も出てきてしまう場合があります。

また、保定期間と言って歯の後戻りを防止する期間中はマウスピースを就寝時のみ装着する場合もあり、マウスピースを装着するのが久しぶりになってしまう場合もあります。
そのような時に痛みが出た場合です。

その痛みは、マウスピースを外している事によって歯が後戻りしてしまったため、装着するマウスピースと歯が合わなくなってしまう事で起きる痛みです。
装着していない期間が数日であればしばらくすればなじんでくる場合も多いですが、1週間以上装着していない場合には、マウスピースをはめる事で歯に強すぎる力がかかり、歯の神経が死んでしまったり、痛みが今までの新しいマウスピースをはめた時の痛みに比べ、各段に大きくなってしまう場合があります

軽い痛みであれば過度に心配する必要はありませんが、マウスピースをあまり装着できていなかったのを取り戻そうと、無理やりマウスピースを押し込むとトラブルや強い痛みの原因になりますので、無理にはめず、治療をしているクリニックに連絡するのがよいでしょう。

アライナー(マウスピース)を出し入れする時の痛み

マウスピース矯正は、特に最初の頃はマウスピースの出し入れの時に痛みが出る事が多いです。

理由は歯の方向がバラバラである事です。
矯正をする方の多くは最初歯にガタガタがあったり、何本かの歯の方向が他の歯と違う方向を向いています。
マウスピースは出し入れするときに一定の方向に出し入れするため、歯の方向が違っている部分やガタガタの多い部分にはマウスピースを出し入れするたびに力がかかってしまいます。
この出し入れの時の痛みも有害なものになってしまう場合があり、出し入れの回数が多い事により歯の方向の悪い部分に大きな負担がかかり、歯の神経が死んでしまったり、歯のグラグラがひどくなってしまったりする場合があります。

だんだん治療が進行してきますと、歯の方向が揃ってきて出し入れをしても痛みはあまり出なくなってきますので、特に最初の歯の並びが悪い時期はできる限り出し入れの回数を少なくするのがよいでしょう。

アライナー(マウスピース)の端が歯茎に当たる痛み

歯茎は柔らかい組織なので、型取りをするときに変形し、実際マウスピースができてくると歯茎に当たってしまう場合があります。
また、インビザラインやクリアコレクト等のコンピュータで歯を動かして行く治療の場合は歯の移動や歯茎の位置の予測も実際と異なる場合があります。
そのため、マウスピースの端は場合によっては歯茎に当たったり食い込んだりして痛みが出てしまう場合があります。

その場合、クリニックに確認してご自身で食い込んでいる部分をやすりで削ったり、ハサミでカットしたりするとよいでしょう。
自身で痛い部分がわからなければクリニックに行ってみてもらい、マウスピースをカットしてもらう事も可能です。

虫歯や歯茎の腫れによる痛み

マウスピース矯正中は歯磨きを怠ると虫歯や歯茎の腫れをおこす事があります。
マウスピースと虫歯に関しての詳しい内容は『マウスピース矯正と虫歯の記事』をご確認下さい。

そのため、それによる痛みが出てくる場合があります。
しかし、虫歯は数か月から年単位で進行しますので、マウスピース矯正を始めてすぐの場合には可能性は低いです。
また歯茎の腫れは矯正中、歯が動く事により歯茎の位置が不安定になっていますので腫れは起こりやすい状態になっています。そのためしっかり歯磨きをしていても腫れてしまう事もあります。
しかし、矯正が終わると歯茎の腫れはスッと引いていく事がほとんどですのであまり心配はいりません。

ただし、元々歯周病がある方の場合には矯正中、適切な管理がないと進行してしまう場合がありますので注意が必要です。
虫歯や歯茎の腫れが心配な場合には定期的なマウスピースのチェックの際に確認してもらうとよいでしょう。

また、歯磨きが不足すると虫歯や歯周病になってしまう場合がありますので、食事をした後はできる限り早く歯磨きを行ってからマウスピースを装着するようにしましょう。
また歯と歯の間は歯磨きだけでは汚れは取れず、マウスピース矯正では歯と歯の間の虫歯が多発する場合がありますので、歯と歯の間はフロス等を用いて食べかすや汚れをしっかり落としてからマウスピースを装着しましょう。

歯ぎしりやくいしばりによる痛み

マウスピース矯正中は歯ぎしりや食いしばりによる歯の痛みが強く感じられる場合があります。

理由は歯が動く痛みの部分でも紹介しましたが、歯はグラグラしながら動いていくため、矯正中は普段とは違い、いつもは歯がグラグラしている状態にあります。
そのため普段と変わらない歯ぎしりや食いしばりもグラグラした歯にはより大きな負担に感じてしまい、歯が痛く感じてしまう事があります。
また、かみ合わせも矯正中とは変わってきてしまうため、歯ぎしりや食いしばりにより顎も痛くなってしまう事があります。

マウスピースによって歯はグラグラしていても抜けたりする事はありませんし、矯正によって歯ぎしりや食いしばりが強くなってしまったわけでもありませんのでそのまましっかりマウスピースを使用していただくという事で問題はありませんが、日常生活に支障が出る、眠れない等の症状がある場合には担当の先生に相談するのがよいでしょう。

また、顎の痛みに関しても徐々に慣れてきたりかみ合わせが良くなっていくことで問題なくなる場合も多いため、日常生活に支障がなければ、なるべく安静にし、様子をみていただくという事で問題ありませんが、徐々に痛みが強くなったり顎が開かなくなってきていたりする場合には担当の先生に相談しましょう。

歯ぎしり・食いしばりの影響』についてはこちらの記事もご覧ください。

ゴムかけをする時の痛み

ゴムかけをすると、普段より強い力で歯が動くため歯に痛みが出る場合があります。

しかし、ゴムかけは顎の上下の位置を調整したり、上下の歯の真ん中の位置を調整するとても大切な治療です。
ゴムかけの時間が少なくなってしまう事で今せっかく行っている矯正の治療がほとんど意味のないものになってしまったり、むしろ治療前より治すのに時間がかかる歯並びになってしまう場合があります。

マウスピース矯正では治療期間が決められており、一定の治療期間を過ぎると治療が完了していなくても治療終了となってしまいます。
そのため、生活に支障があるような強い痛みでなければできる限り長くゴムかけをしていただいた方がよいです。
また、顎のずれがよくなればゴムかけは終了となり、常につけているものではありません。そのため、短期集中で頑張ってゴムかけを続けていただくのがよいでしょう。

ただし、ゴムかけを行って顎に痛みがある場合にはいったん中断してクリニックに確認をした方がよいです。
顎の痛みの場合は歯の痛みとは違い、顎の関節に問題があったり負担がかかってしまっている可能性があります。
そのまま無理に続けていると、顎関節症になってしまったり口が開かないまたは口をあけると音がなる等の症状が出てきてしまう事があります。
違和感程度であれば問題ない事も多いですが、一度なってしまうと癖になり、顎関節症になりやすくなってしまう場合もありますので、無理に続けず、クリニックに相談しましょう。

マウスピース矯正のゴム掛け』についてはこちらの記事もご覧ください。

痛みが出た時にやっていいこととやってはいけないこと

やってもいいこと

マウスピースを交換せず同じマウスピースを続ける

マウスピースがきつい、痛いと感じる時、指定された交換の期間を延長して同じマウスピースをつけていただくのは問題ありません

人によって歯の動く早さは違います。
そのため次のマウスピースを装着すると強い痛みが出るようであれば、まだ歯が前のマウスピースの位置までしっかり動いていない可能性があります。

1つ前のマウスピースに戻ってしばらく期間をあけてから次のマウスピースに進んでいただいても構いません。
逆に痛みがないからと言って指示された交換頻度より早い期間でマウスピースを次々交換してしまいますと、徐々にマウスピースは合わなくなってしまいますので、逆はやってはいけません。

顎が痛いので、痛い時はゴムかけを休む

顎が痛いのを我慢してゴムかけを継続していると顎関節に問題が出てきてしまう場合があります。

そのため、歯ではなく顎が痛い場合には一旦顎間ゴムの使用をやめ、クリニックに連絡をしてゴムの強度を弱めてもらったり、しっかり状態をみてもらってからゴムを継続するようにしましょう
違和感がある程度であれば問題ありませんので、問題なく続けられるようであればしっかりと使うようにしましょう。

歯茎にマウスピースが当たるのでやすりやハサミで調整する。

場合によってはマウスピースの端が歯茎に当たって痛みが出てしまう場合があります。

その場合、そのままにしても治る事はありませんし、歯茎を傷つけてしまう場合もあります。
そのため、クリニックに連絡をし、市販のハサミやヤスリ等で当たる部分を削ってしまってかまいません。
ただし、あまりに大きく切りすぎますと歯の動きが悪くなってしまう場合がありますので少しづつ切るようにしてください。

やってはいけないこと

痛みがあるのでマウスピースの装着を休む

痛みがあると問題があるのでは、とマウスピースの装着を中断してしまう方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、マウスピースの装着を中断してしまいますと、歯はそのままの位置で止まっているわけではなくどんどん後戻りしていってしまいます

そのため歯に痛みがある場合も続けてマウスピースの装着が必要となります。痛みが強い場合にはひとつ前のマウスピースに戻ってもよいので必ずマウスピースは食事以外の時間はつけるようにしましょう。

歯に痛みがあるのでゴムかけを休む

次にゴムかけです。
顎が痛い場合には顎の関節に問題がある可能性があるため一旦顎間ゴムを中断して構いませんが、歯が痛い場合にはそのまま続けなければいけません。

マウスピースだけの装着より歯は痛みが強くなる場合がありますが、ゴムかけはとても大事な治療です。
場合によっては数か月、1年をかけて上下の顎をずらしていく場合があり、さぼってしまうと治療が治らなくなってしまう可能性があります。
また、ゴムかけで達成できる上下の顎のずれはマウスピース単体ではできない動きとなる事も多いのでしっかりかけるまで治療が終了しない事もあります。

そのため、歯の痛みが強くなったとしてもゴムかけはマウスピースを装着している1日20~22時間の間、常につけている必要があります

痛み止めは飲んでもいいの?

痛み止めはアセトアミノフェン(カロナール)は歯の動きが悪くなるような成分が入っていないため矯正治療中の服用に推奨されています。
市販のものであれば、バファリンセデスなどがよいでしょう。

しかし、ロキソニン等の鎮痛剤を服用した事で歯の動きが遅くなってしまった、という事はほとんど経験がありませんので、アセトアミノフェンがなければ、短期間であればロキソニン等を服用しても問題ないと考えています。

まとめ

本日はマウスピース矯正と痛みについてのお話を解説していきましたがいかがだったでしょうか?

マウスピース矯正はワイヤー矯正と比べると痛みが少ないため、治療を始めるハードルが低いのが特徴です。特にインビザラインやクリアコレクトと言ったコンピュータで動きを制御するものに関しては特に強い痛みが出にくいです。

しかし、矯正は歯が動く痛みだけではなく様々な痛みが出てくる場合があります。
虫歯や歯周病になった場合、歯ぎしりや食いしばりをしたときの痛み、食事をするときの痛み、マウスピースが歯茎に当たる痛み等様々です。

虫歯や歯周病でなければ矯正中の歯の痛みはなくなる事がほとんどですので、クリニックに相談したり痛み止めを飲んだりしながら何とかしのいでいきましょう。

また、マウスピース矯正中に痛みが出た時やってもいい事といけない事があります。
マウスピースが歯茎に当たるので自分でハサミで調整したりヤスリで削ったりする事は問題ありません。
そして痛みが残っているためマウスピースの交換頻度を下げるのも構いません。

しかし、途中で痛みがあるからと言ってマウスピースの使用をやめてしまったり、ゴムかけをやめてしまってはいけません。


ねもと歯科クリニック|札幌・大通りエリアの矯正歯科
北海道札幌市中央区南1条西9丁目南1条西9丁目1−15井門札幌S109ビル 1階
TEL:011-206-4183

SNSでもご購読できます。