インビザライン治療におけるIPRについて

IPRを行う歯のイラスト

こんにちは。ねもと歯科クリニック院長の根本有紗です。
最近ワイヤー矯正と同じくらいメジャーになってきたインビザラインですが、時々IPRという言葉を聞いたことはないでしょうか?

IPRは歯を削る処置となるのですが、削ると聞くと歯が小さくなってしまわないだろうか、すごく痛いのではないだろうかと不安になってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

歯を削る量というのはごく少量で、もちろん歯列矯正を行う上での目的とメリットがあり、内容をしっかり理解すればそれほど怖がるものではありません。

しかし、他のサイトでは「IPRはいい事ばかり」と言った記事が目立ちますが、本当でしょうか?
一般歯科と矯正歯科どちらも15年の経験を持つ歯科医師が、そのあたりまで掘り下げて解説していきますので、最後まで読んでいただければと思います。

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IPRとは

IPRとは、InterProximal Reductionの略でInterProximalが歯と歯の間、Reductionが削るという事なので「歯と歯の間を削る事」という意味になります。

歯を削る量は、エナメル質が全部で2~3ミリあるうちの0.5~1ミリ程度です。

私は、矯正治療の初期からブラックトライアングルを減らすために患者様とご相談の上よくIPRを行っていたのですが、インビザラインという治療が出てくるまではワイヤー矯正で歯と歯の間を削って矯正を行っている先生はかなり少なかったかな、と思いますので、インビザラインの登場で脚光を浴び始めた言葉です。

ねもと歯科クリニックのインビザライン治療』についてはこちら

IPRの目的とメリット

歯は「削らない」「抜かない」それが一番!と予防歯科で聞いたという方もいると思います。
それではなぜ歯と歯の間を削るのでしょうか?

1.歯を抜かないで矯正を行うため

歯列矯正でできる歯のガタガタは、歯の隙間が足りないために起こるものです。

歯が綺麗に並ぶのに必要な隙間を作るために抜歯を行う事もありますが、足りない隙間がそんなに大きくない場合には、全体的に少しずつ歯を削る事で抜歯せずに済む可能性が高まります。

逆に、無理にIPRや抜歯をおこなわずに治療をすると、歯茎が退縮してしまったり、矯正後に口ゴボになってしまう場合があります

2.ブラックトライアングルを減らすため

ブラックトライアングルと言われる、歯茎が足りないために歯と歯の間にできる隙間があります。
このブラックトライアングルを小さくするために、IPRを行う事があります。

矯正後に起こるブラックトライアングル』についての記事はこちら

3.治療期間を短縮するため

歯と歯は、重なりが強いとガタツキをとるのに時間がかかってしまいます。
あらかじめ歯と歯の間を削っておけば、重なりも少なくなりインビザライン治療の期間の短縮につながる場合があります。

4.歯の安定性を向上させる

極端な話をすると、歯ぐきから出ている部分の歯は球体に近いような形をしています。丸いものをならべるよりも、四角いものを並べた方が位置が安定します。
矯正歯科の分野においても一般的に、歯を削って一本一本の歯を四角に近づけてあげた方が安定がいいと言われています。

そのため歯科医師の先生によっては、特に削って隙間を作る必要がなくても歯と歯を面で接するようにする事で、矯正の安定を図ろうとしている先生もいます。

IPRの安全性とデメリット

ではIPRは確実に安全なのでしょうか?
この件に関しては、一般歯科、予防歯科も15年間治療を行ってきた私としては、他の矯正歯科の先生方とは少し意見が違います。

私の意見は、極端に恐れる必要はないが積極的に100%安全と全ての方に勧められるものではない。と考えています。

その理由を以下に説明していきます。

エナメル質の厚みが減る

歯のエナメル質

直ちに虫歯になり易くなるというものではありませんが、エナメル質の厚みは減ってしまいます

エナメル質とは歯の一番外側にある硬いコーティング部分を指します。
場所にもよりますがエナメル質の厚みは2~3ミリ程度の層になっています。

エナメル質はほとんどが無機質でできており、30%ほど有機質を含む内側の象牙質とは全く硬さや虫歯に対する抵抗性が違います。
そのため、虫歯菌がエナメル質の一番外側から象牙質の境界線まで進行するのに約7年かかると言われています。
しかし、象牙質はエナメル質以上の厚みがありますが、約1.5年程度で虫歯菌が神経まで到達してしまうと言われています。

虫歯の予防を普段から行い、虫歯にならなければ全く問題はありませんが、エナメル質が虫歯を防御しているのは事実で、IPRとはそのエナメル質を0.5~1ミリ程度削るものです。

直接歯と歯の間の形をきれいに作るのは難しい

一般歯科、保険診療や審美歯科においても、歯と歯の間の形を直接きれいな形にするというのはとても難しいです。

歯の丸みが強い方やブラックトライアングルが大きい場合には、歯を削るのはそれほど難しい事ではありませんのでIPRは推奨されます。
しかし、元々歯が四角い形をしていて、抜歯を避けるために無理に削ると、歯の形が不自然で清掃がしにくい形となってしまう場合があるため注意が必要です。

歯と歯が面接触となってしまう

天然の歯の場合、歯と歯の間はそんなに大きな面では接しておらず、点で接触、または小さな面での接触となっています。

しかし、IPRを過度に行うと比較的大きな面で歯と歯の間が接する事になります。

歯の接した部分は虫歯になりやすいためフロス等での清掃が必須ですが、そのフロスで清掃が必要な面積が増える事になります。

IPRの痛みについて

IPRはエナメル質の範囲内で行うもので、エナメルは無機質で感覚がないのであまり痛みはありません
なので、麻酔は行わず削る事が一般的です。

しかし、知覚過敏のある方は少し痛みを感じたり、削るときの摩擦や熱で少し痛みを感じる事もあります。
ですので痛みを少し感じた場合もエナメル質は痛くないはずなのに。。。と不安に思わなくても大丈夫です。

IPRの失敗について

IPRでの失敗が怖いという方もいらっしゃるかと思いますが、IPRはエナメル質の範囲内0.5~1ミリ程度を削るもので、大きな失敗はありません

しかし、特に奥歯は歯と歯の間が点接触でない場合には適切な形を作るのが難しくその後清掃がしにくくなってしまう場合もありますので、必要なのであれば、前歯まで、または小臼歯までにしてもらうというのも一つの方法です

歯の形が変わってしまうのでは?

歯の形はほんの少しスリムになるかな、という程度で形に関しては気づかれない方がほとんどです

知覚過敏になるのでは?

適切な量のIPRであれば知覚過敏の心配はいりませんが、患者様によってはIPRで前歯が後ろへ引っ込んだのが嬉しくなり、健康を損なってもよいのでもっと削ってもらいたいという方もいらっしゃいます。

過度に削ってしまうと知覚過敏になってしまう場合もありますので、医師の指示に従うのがよいでしょう。

IPRを行うタイミング

IPRをいつ行うかという事についてですが、インビザラインではクリンチェックというシュミレーションがあります。そして歯の動きに合わせて削る部位の指示があります。

その指示が出たマウスピースの枚数の部分で削っていきますので、全ての歯を同時に削るわけではありません。

まとめ

IPRは歯と歯の間を削り、矯正治療で歯を並べていくために必要な隙間をつくる処置です。
ブラックトライアングルを小さくしたり、歯並びを安定させる事ができるといったメリットがありますが、少量ですがエナメル質を削ることになるためデメリットもあります

インビザラインではIPRがよく行われます。
しかし、IPRを行わずにインビザライン治療を行う事もできますので、治療を受ける際には担当医と相談の上でメリットとデメリットをよく検討していただき、IPRを行うかどうかの基準にしていただけますと幸いです。

ねもと歯科クリニックではお一人お一人に十分な診療時間を確保したうえで、丁寧な治療を心がけております。
また、治療の度に担当医が変わってしまったりという事もございません。
矯正治療をお考えの方は、無料でのカウンセリング予約もできますので、ぜひご連絡いただければと思います。


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